研究概要 |
本研究では,酸化的損傷に対する塩基除去修復酵素hOGG1ならびにmNthl1の生化学的な酵素特性解析を行い,原核生物のホモログとの機能的な相違を検討した. 1. 8-oxoGおよびme-Fapyを含むオリゴヌクレオチドを基質として,hOGG1およびFpgの両基質に対する活性と酵素パラメーターを調べた.8-oxoG,me-Fapyはともに両酵素の基質となることが示されたが,切断生成物は,hOGG1ではβ-脱離生成物であるのに対し,Fpgではβ,δ-脱離生成物であった.hOGG1の8-oxoGおよびme-Fapyに対するkcat,Kmは数倍程度異なったが,反応効率(kcat/Km)は同程度であった.Fpgでも同様な検討を行ったところ,hOGG1に比べ高いkcatが得られたが,基質特異性に関してはhOGG1と同様な結果が得られた.NaBH_4存在下,8-oxoGあるいはme-Fapyを含む基質とhOGG1,Fpgをインキュベートし,生成物をSDS-PAGEで分析した.その結果,両酵素で基質-酵素間のクロスリンク複合体の存在が確認された.これは,反応中間体として,酵素-基質間でSchiff baseが形成されることを示している. 2. 様々な損傷を含むオリゴヌクレオチド基質を用いてmNthl1と大腸菌ホモローグ(EndoIII)の基質認識の差を検討した.TGの立体異性体(5S,6R体と5R,6S体)に対する活性は,両酵素の間で有為な差は認められなかった.また,EndoIIIではTGとURに対する活性は同程度であったが,DHTに対する活性は著しく低く,TGの約1/15であった.mNthl1でもTGとURに対する活性は同程度であったが,DHTでは低かった.しかし,DHTに対する活性はEndoIIIの場合ほどの大きな差はなく,TGの1/2程度であった.
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