研究概要 |
遺伝性乳癌の約60%はBRCA1、あるいはBRCA2遺伝子の変異により発生すると推測されている。日本人家族性乳癌家系78例の検討では、BRCA1、あるいはBRCA2遺伝子の異常により発生するものは約40%程度と欧米に比較すると低頻度であることを報告したが、これらの結果は第3の原因遺伝子が存在する可能性を強く示唆するものである。この原因遺伝子がBRCA1、あるいはBRCA2の関連遺伝子の中に存在する可能性を考え、酵母のTwo-hybrid法によりBRCA2,遺伝子産物に結合するタンパク質の同定を試みた。さらに単離されたBRCA2結合分子については遺伝性乳癌の原因遺伝子である可能性を検討するために、遺伝性乳癌家系における遺伝子変異のスクリーニングを行った。このBRCA2結合分子の単離はBRCA2の機能解析にもつながるものである。N端付近の領域1からRNApolymeraseIIのelongation factorであるELL1、ELL2、およびELL1、ELL2に相同性を示す新規遺伝子を単離した。また、C端付近の領域8では、PPAR-γが、領域2では、CAF-1のp150subunitが結合候補遺伝子として同定された。すでにBRCA2,とのinteractionを報告したRAD51遺伝子は、組織発現パターンがBRCA2ときわめて類似していることなどから遺伝性乳癌の原因遺伝子である可能性が強く、エクソン-イントロン境界領域を含むゲノム構造を決定し、遺伝性乳癌家系での胚細胞遺伝子変異のスクリーニングを行った。2例の同時性両側性乳癌患者にコドン150のアミノ酸置換を同定し、約300例の解析でこの変化がこの2症例以外認められないことから発癌の原因となる遺伝子変異と考えられた。
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