研究概要 |
慢性骨髄性白血病の癌細胞中で極めて強くチロシンリン酸化されている蛋白質、p62は多種多様なチロシンキナーゼの共通基質でもある。代表者とバルチモアはp62をPH、PTB領域を持つドッキング蛋白質Dokとして同定し,既にそのノックアウトマウスも作成している。本年度は、Dokの機能解析通じて以下の成果を得た。 1) Srcキナーゼのトランスフォーメーション活性はDokの過剰発現により約四分の一に抑制された。PTB領域に導入した点変異によりこの抑制活性が阻害されることからDokはSrcによる細胞の癌化をそのPTB領域を利用して抑制できることが示唆された(バルチモアらとの共同研究)。 2) in situ hybridization法により血球系細胞と軟骨細胞でのdokの高い発現が認められ、少なくともリンパ球ではDok蛋白質の高い発現も確認された。そこでBCR刺激後のDokのチロシンリン酸化について検討したところ、Dokは抗IgM抗体による刺激後二分以内に極めて強くリン酸化された。また、BCR/FcgRIIBを同時に刺激すると、Dokのチロシンリン酸化がさらに亢進した。BCR/FcgRIIB刺激ではDok欠損によりB細胞の増殖能が回復したが、BCR単独刺激ではDokの有無によらず同程度の増殖を示した(成内らとの共同研究)。このことから、DokはFcgRIIBを介する増殖抑制の情報伝達に必須の分子と考えられた 3) Dokの細胞接着刺激によるチロシンリン酸化について検討したところ、ファイブロネクチンやポリ-L-リジンの刺激により強くリン酸化された。しかし、これらの細胞接着刺激によるDokのチロシンリン酸化がSrc欠損細胞では極端に低下していることから、細胞接着刺激によりSroがDokをリン酸化することが示唆された(野口、的崎、春日らとの共同研究)。
|