組織修復のマーカー因子として、組織修復の過程に段階を追って順序よく発現する数種のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)があげられる。そのうち、受傷直後より発現し、治癒によりその発現がみられなくなるMMP遺伝子で、また癌の浸潤転移に関与する知見が集積されつつある膜型MMP(MT1-MMP)に注目して、以下の検討を行った。 1) マウス129ストレインのゲノム遺伝子ライブラリーをスクリーニングして、MT1-MMP遺伝子およびその上流約10kbを得た。MT1-MMP遺伝子の上流約3kbをシークエンスして、MT1-MMP遺伝子はTATAlessプロモーターで、シスエレメントの解析では明らかなTREは存在しなかった。 2) MT1-MMP遺伝子を発現する細胞、あるいはしない細胞に、MT1-MMP遺伝子のプロモーター領域にルシフェラーゼをレポータ遺伝子として構築した遺伝子を導入したところ、MT1-MMP遺伝子を発現する細胞でプロモーター活性を得られた。しかしながら現在までのところ、in vitroでMT1-MMP遺伝子を直接的、あるいは間接的に制御する因子は同定出来ておらず、引き続き同定を試みる。 3) 第1エキソン途中から第4エキソンまでをLacZ遺伝子、Neo遺伝子に置き換えたターゲットベクターを構築してES細胞に導入し、目的の細胞を得た。現在までに、ヘテロマウスが得られ、ヘテロマウスでのLacZ遺伝子の発現と、正常マウスでのプロモーター遺伝子の発現を比較検討中である。
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