ヒトテロメアはTTAGGG配列を繰り返した二重らせんDNA構造とこれに特異的に結合するhTRF1で構成されている。がん細胞等では両者の複合体の長さがテロメラーゼの酵素活性を負に制御している。今回ヒトテロメア結合タンパク質のhTRF1のDNA結合ドメインの立体構造をNMR法により決定した。hTRF1のDNA結合ドメインのアミノ酸配列は原がん遺伝子産物のC-MybのDNA結合ドメイン中に発見された52アミノ酸からなる3個のリピート構造の各々の配列と相同である。ペプチド合成した53アミノ酸のhTRF1のDNA結合ドメインは3本のαヘリックスを持ち2番目と3番目のαヘリックスでヘリックス・ターン・ヘリックス類似のモチーフを形成していた。3本のへリックスはトリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンで構成される疎水的なコアで安定化されていた。2番目のヘリックスと3番目のヘリックスでヘリックス・ターン・ヘリックス様モチーフを形成していたがターン部位の長さと3番目のへリックスの長さがhTRF1のDNA結合ドメインではc-Mybリピートよりも長かった。3番目のへリックスの長さはむしろホメオドメインの認識ヘリックスの長さに似ていた。 大腸菌発現系よりhTRF1のDNA結合ドメインを大量調製し15Nや13Cの安定同位体でラベルして各種3次元NMRの測定を行った。その結果DNA結合ドメイン単独でGGGTTA配列に特異的に結合することがわかった。DNAとの相互作用にフレキシブルなN末と3番目のへリックス領域が関与していることがNMRの解析の結果判った。その結果に基づきテロメアDNAとの複合体構造のモデルを構築をした。hTRF1のDNA結合ドメイン単独でGGGTTA配列を特異的に認識できることが判った。DNAの大きな溝でバリンがチミンを、アスパラギン酸がアデニンをアルギニンとリシンが各々グアニンを認識しDNAの小さな溝でアルギニンとリシンがアデニンを認識しているモデルが構築できた。
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