酵母人工染色体クローン操作等、新しい方法による未知がん抑制遺伝子の単離と解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10152265
• 研究機関: 国立がんセンター
• 研究代表者: 村上 善則 国立がんセンター研究所, 腫瘍遺伝子研究部, 室長 (30182108)
• キーワード: 肺非小細胞がん / がん抑制遺伝子 / 第11染色体長腕 / 酵母人工染色体 / スフェロプラスト融合法

研究概要

第11染色体長腕q23領域に存在するヒト肺非小細胞がん抑制遺伝子の単離を目的として、前年度迄に、この領域の酵母人工染色体(YAC)クローンをヒト肺非小細胞がん細胞A549に導入することにより、約700キロ塩基対の断片内にヌードマウス皮下の腫瘍原性を抑制する活性が存在することを見出した。今年度は、以下の解析結果を得た。
1. 約700キロ塩基対の当該領域内に存在する候補遺伝子の一つをクローン化した。
2. 当該領域を網羅する連続した細菌、並びにファージ人工染色体(BAC、PAC)クローンを得た。
3. PACクローンをヒト培養細胞に安定して導入する方法を開発した。
4. A549細胞に導入することにより、腫瘍原性の抑制活性を示す2つのクローンを単離した。
5. このPACにクローン化された130,448塩基対からなるゲノムDNAの塩基配列を決定した。
6. この領域の遺伝子を、エクソン・トラッピング法、cDNAハイブリダイゼーション選択法によって検索し、2つの候補遺伝子の断片を単離した。

研究成果

• [文献書誌] Murakami,Y.et al.: "Localization of Tumor Suppressor Activity Important in Non Small Cell Lung Carcinoma on Chromosome 11q" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 95. 8153-8158 (1998)
• [文献書誌] Kon,H.,Murakami,Y.et al.: "Structural and functional evidence for the presence of tumor suppressor genes on the short arm of chromosome 10 in human gliomas" Oncogene. 16. 257-263 (1998)
• [文献書誌] Murakami,Y.& Sekiya,T.: "Accumulation of genetic alterations and their significance in each primary human cancer and cell line" Mutation Resarch. 400. 421-437 (1998)
• [文献書誌] Kijima,G.,Murakami,Y.,et al.: "Nonsense mutation at codon 63 of the BRCA1 gene in Japanese breast cancer patients." Jpn.J.Cancer Res.89. 837-841 (1998)
• [文献書誌] Saito T.,Murakami,Y.,et al.: "Difficult tracheal intubation in patients with retinoblastoma caused by 13q deficiency" Jpn.J.Clin.Oncol.28. 507-510 (1998)