研究概要 |
薬物の脳への移行性は血液脳関門の働きによって制御されているが、その機構については不明な点が多い。特に、近年発見されたP-糖蛋白などの排出輸送系が血液脳関門(BBB)で生理的にどのような働きをしているかほとんど解明されていない。そこで、本研究はBBBの排出輸送系の多様性とその生理的意義を特に機能の観点から解明することを目的とした。以下の点を解明した。 1. 血液脳関門(BBB)には胆汁酸を排出する輸送系が働き、血液中のタウロコール酸やコール酸などの胆汁酸の脳への移行性を顕著に制限していること。その輸送系は、既に報告したBBBのパラアミノ馬尿酸(PAH)排出輸送系とは異なること。 2. 胆汁分泌されるアニオン型環状へプチド性薬剤BQ-123は、BBBから担体輸送系で排出されること。この輸送系は胆汁酸輸送系とは異なること。 3. 脳内ステロイドであるデヒドロエビアンドロステロンの硫酸抱合体(DHEAS)は、BBBから未変化体として担体輸送系で排出されること。 4. L-cystineを取り込みL-glutamic acidを排出するsystem Xc-がdiethylmaleateによってBBBに誘導されること。 5. In vitroだけでなくin vivoマウスの実験系においてMultidrug resistance modulator(MDR)のPSC833によって、P-糖蛋白(P-gp)を多く発現している直腸癌細胞(HCT-15)におけるvincristine(VCR)とvinblastine(VBL)の排出速度が顕著に低下すること。この時、VCR,VBLの細胞内へのinflux速度にPSC 833は影響しないこと。
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