神経外胚葉系由来のヒトメラノーマやT細胞白血病細胞では、酸性糖脂質GD3の特徴的な発現が認められる。そこでGD3合成酵素ゲノム遺伝子の構造と転写調節領域を解析し、以下の結果を得た。GD3合成酵素ゲノム遺伝子は、1、5個のエキソンより構成され、転写開始点は、約-525nt(+1:A of ATG)に存在した。2、本酵素遺伝子強発現メラノーマ細胞株おいて、本酵素遺伝子5'上流域約2.3kbに存在するプロモーター/エンハンサー活性は弱かったが、これにSV40エンハンサーを付加することにより明らかなプロモーター活性が検出された。また、このプロモーター活性は本酵素遺伝子非発現細胞株では、検出されなかった。3、5'上流域の段階的欠失変異ルシフェラーゼ活性の検討により、-1023〜-746ntに遺伝子発現に一致したプロモーター活性が検出された。4、この領域にはTATAボックスはなく、GCボックスが存在し、既知の転写因子結合モチーフを検索した結果、CREB、c-Myb、v-Myb.GATA.MAF1、Sp1等の結合モチーフが存在した。現在までに、ヒトメラノーマのsurvival factorとして、CREBが作用していること、また、c-MybがFGF-2を間接的にtransactivationしてFGF-2を介したメラノーマのautocrine growthに関与していることが報告されている。このような知見を考慮して、今後、GD3合成酵素遺伝子発現におけるこれらの転写因子の関与について詳細に検討を進める。また、本酵素遺伝子の5'上流域-1023〜-746ntに検出された強いメラノーマ特異的プロモーター活性を応用することにより、メラノーマ特異的遺伝子治療の開発に発展させる。
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