研究概要 |
A. 研究目的 本研究ではアルキル化剤をはじめ各種抗癌剤に対して耐性を示すGST-π遺伝子を導入した造血幹細胞移植の抗癌剤耐性化療法としての有効性をin vivoで明らかにすることを目的とする。 B. 方法と結果 (1) ヒトCD34+幹細胞への遺伝子導入はGST-π発現レトロウイルスベクター(PLJGST-π)を用いfiburonectinをコートしたプレート上で行った。4-HCおよびadriamycin存在下でCFU-GM colony assayを行いそれぞれの抗癌剤に対する耐性を検討した結果、両者ともGST-π導入D34+細胞で対照に比較し有意に多くのCFU-GM colony形成が認められた。 (2) BALB/cマウスの骨髄単核球(BMMNC)に同様にGST-π遺伝子を導入した。別のBALB/cマウス(1st recipient)にtotal body irradiation (TBI)10Gy施行後GST-π導入BMMNC(1x105)を移植した。移植28日後にcyclophosphamide(CY)100mg/kgを静脈内投与した。同様の投与をさらに6週後、12週後に行った。投与後4,8,16日目の末梢血白血球数を測定した。その結果1コース目のCY投与後白血球減少率はGST-π移植マウスで44±6%、対照マウス(NeoR)で55±10%と両者間で有意差を認めなかった。しかしながら2コース目ではGST-π移植マウスで32±5%,対照群で64±11%と有意に軽度であった。さらに3コース目では対照群が80±3%と強度の白血球減少を来したのに対しGST-π移植マウスでは白血球減少を認めなかった。 (3) 3コース目のCY投与4週後にGST-πmRNA発現をRT-PCRで検討した結果、CFU-GM,CFU-Megでそれぞれ50%,BFU-Eで60%にmRNA発現を確認した。以上より本療法で骨髄のアルキル化剤に対する耐性化が可能と考えられた。
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