我々は中枢神経系におけるイノシトールリン脂質代謝系の情報伝達機構に関わるジアシルグリセロール(DG)キナーゼの役割を追及する目的で、I型からIV型のDGキナーゼアイソザイムのcDNAを単離し解析を行っているが、このうちIV型DGキナーゼは、核移行シグナルを含んでいることから核内イノシトール情報伝達系に関わることが示唆されている。これまで、IV型DGキナーゼのcDNAにエピトープタグをコードする配列を付与し、培養COS細胞に強制発現後エピトープタグに対する抗体で細胞内局在を検討した結果、核に強い免疫反応が検出されIV型DGキナーゼが核に局在することが明らかとなった。 本研究では、非増殖細胞である神経細胞でのIV型DGキナーゼの細胞内局在を明らかにする目的で、昆虫細胞(sf21)発現系を用いてIV型DGキナーゼの部分蛋白を発現させ、これを抗原として家兎免疫抗体を作製し、免疫組織化学的検索を行った。ラット脳ホモジネートを用いてウェスタンブロットを行ったところ、作製した抗体はIV型DGキナーゼの推定分子量104kDa付近で単一バンドを認識した。免疫組織化学的検索によるIV型DGキナーゼの反応は、大脳および小脳の大部分の神経細胞の核内に、様々な発現強度で検出された。特に、大脳皮質第V層の錐体細胞や小脳プルキンエ細胞などの大型の神経細胞では核内の免疫反応も強く、加えて細胞体および樹状突起などにもび漫性の免疫反応が認められた。神経細胞核内の免疫反応は、均一ではなく粗な顆粒状に検出され、核小体と思われる領域は陰性であった。 さらにIV型DGキナーゼと約70%の相同性を示す新しいアイソザイム、V型DGキナーゼの部分cDNAを得、その全長ならびに発現局在を解析中である。
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