研究概要 |
低分子量G蛋白Rinは,神経系に特異的に発現するカルシウム依存性カルモジュリン結合蛋白として同定された。細胞の増殖,分化などを制御する低分子量G蛋白Rasと比較すると,いくつかの特徴的構造を有しており,神経系においてRas蛋白とは異なるRin蛋白に特有な新しい細胞内シグナル伝達系の存在が想定される。そこでRin蛋白の生理的役割を解析した。 1) Rin蛋白とカルモジュリンの結合:細胞内においてRin蛋白とカルモジュリンはカルシウム依存性に結合することを確認した。さらに,酵母two-hybrid法を用いてin vivoにおけるRin蛋白とカルモジュリンの結合も証明した。 2) Rin蛋白の細胞内局在:Rin cDNAをCOS細胞内へ導入し,細胞を超遠心法にて分画後ウエスタン法にてその局在を検討したところ,細胞膜分画にも発現を認めた。Rin蛋白は,細胞膜への結合に必要だと考えられているプレニレーション修飾部位をC末端に有しないにもかかわらず,細胞膜に存在することが判明した。 3) Rin蛋白とMAPキナーゼ系との関係:活性型RinをCOS細胞内に導入しMAPキナーゼ系の活性化の有無を調べたところ,その活性化は認められなかった。また,Rasの標的蛋白の一つであるc-Rafとの結合も認められなかった。 4) Rin蛋白に対するモノクローナル抗体の作製:大腸菌に発現させたRin蛋白を用いて、特異的モノクローナル抗体を作製した。この抗体は,ヒト特異的で,ウエスタン法および免疫沈降法に使用可能である。また,ウサギを免疫して,ポリクロナール抗体も得た。 5) Rin蛋白のリン酸化:正リン酸を用いた実験で,COS細胞においてRin蛋白は10番目および200番目のセリン残基がリン酸化を受けることを証明した。さらに,これらのリン酸化は脳lysateによってもおこることが判明した。
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