研究概要 |
シナプス伝達に伴うNMDA型グルタミン酸受容体を介したカルシウム流入はシナプスの活動性に依存した可塑性の最初のステップである。NMDA受容体を介したカルシウムの作用範囲をイメージング法により測定した。ラット大脳皮質培養神経細胞を用い,カルシウム感受性色素を含んだPatch電極をWhole-Cellの状態にする事によって単一の神経細胞に投与した。NMDA受容体を介したカルシウム上昇(miniature synapticcalcium transient:MSCT)には樹上突起内のPoint(シナプス)から始まり抹消側と中枢側の両側に広がり、開始地点で最もSharpな立ち上がりと大きなPeakが見られた。この一過性カルシウム上昇を点源からの単純な円柱内における小分子の拡散として樹状突起内のカルシウム拡散速度を求めた。カルシウム感受性色素の影響を除くためにカルシウム感受性色素の濃度を変えて拡散速度を測定、カルシウム感受性色素のない状態に外挿した。その結果、樹状突起内のカルシウムの拡散係数は14.4m2/sであった。一方、シナプスにおけるNMDA型グルタミン酸受容体を介したカルシウムのLifetimeはMSCTのDecayをSingle ExponentialFunctionに当てはめることにより求められ、0.3秒であった。以上の結果よりシナプスにおけるカルシウムの作用範囲を求めると約2mであった。このカルシウムの作用範囲はシナプスの平均距離とほぼ等しくカルシウムがシナプス間細胞内メッセンジャーとして働くためには、頻回刺激などでカルシウムのLifetimeが延長するか、Mobile calcium bufferによりカルシウムの拡散が促進される必要があると考えられた。
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