研究概要 |
まず大脳基底核原器から大脳新皮質に移動する分子メカニズムから、この細胞集団は、2種類に分類できることが分かった。DiI標識と、in situ hybridizationを組み合わせた二重染色法(Fujimori et al.,1997)により、移動細胞には、Semaphorin III受容体であるneuropillinを発現している細胞と、Semaphorin IV受容体であるneuropillinIIを発現している細胞があることが分かり、Semaphorin IIIが上衣下層にそしてSemaphorin IVが皮質板に発現していることから、neuropillin陽性移動細胞は中間帯に留まらず皮質板に入ること、neuropillinII陽性移動細胞は皮質板に近づかず中間帯に留まると考えられた。M.Tessier-Lavin氏より供与を受けた、semaIII,semaIVの強制発現プラスミドをcos1細胞に導入して作った細胞塊と、大脳皮質組織とコラーゲンゲル中で供培養したとき、大脳皮質組織片から出てきた細胞はcos1細胞を避けて移動した。この様な分子メカニズムにより、移動細胞は、大脳皮質板と、皮質中間帯に向かうことが、考えられた。2箇所の違った目的地への細胞移動は、UV-thymine-dimer標識法を、Thymine dimerを除去出来なくなったXPAミュータントマウスに使い、確認することもできた。これらのIZ神経細胞は、netrin受容体であるDCCを第5層錐体細胞同様に発現していたこと、第5層錐体細胞より早く生まれて、早くから軸索を内包に伸ばしていた点から考えて、皮質脊髄路、皮質上丘路に於いて、パイオニア神経細胞として働くための必要条件を満たしていた。
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