研究概要 |
我々は,生後のマウス大脳半球において,発達依存的に発現量を変化させる100以上の遺伝子を見出した(生後0,1,2,4,6週齢で検討).本研究においては,これらの遺伝子群について第2次のスクリーニングをおこない,神経活動に依存したシナプス選抜・増強に関与する遺伝子を系統的に検索することをおこなった. 遺伝子発現の比較方法として,Differential display(DD)法の改良をおこなった。これによって,特殊な装置を使わず,RIを用いずに遺伝子発現の比較ができるようになり,遺伝子検索作業の速度が飛躍的に増加した.本法では,従来のRIを用いたDD法に比較して,RT-PCRから,発現に差のある遺伝子断片を入手するまでの時間が約1/10に短縮された. ノーザンブロット解析によって調べると,上記の遺伝子群の発現量の変化には、以下のパターンがあった. (1) 減少型発現:成長にともない発現は減少 (2) 一過性発現:1〜4週齢頃に発現のピーク (3) 増加型発現:成長にともない発現は上昇 (4) 増加型発現巨大遺伝子:成長に伴い発現は上昇.10kb以上の転写産物 この結果をふまえて,本研究では,特に(2)一過性発現群に重点をおいて研究した.我々が得た生後発達依存的に発現を変える遺伝子のうち,1-4週齢に一過性に発現する遺伝子は,シナプス選抜,増強に関与する可能性が高い.さらに,これらのいくつかは,神経活動依存的に発現が制御されていることが期待できる.これらの2種の遺伝子を系統的に得ることを目指した。 現在までに見いだした発達依存的に発現が変化する遺伝子群の部分配列を,約20種類決定した.これらについて,ホモロジー検索をおこない,興味深い配列を持つ4種のものについて,全長クローン化と配列決定を進めている.
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