研究概要 |
扁桃体キンドリング・長期増強(LTP)などの記憶形成のモデルを用いて、新しい神経回路の形成を電気生理学的に証明しようと試みられている。一方で、新しく作られた回路において、シナプスの数や大きさにおける形態学的変化が観察されている。しかしながら、総括的な面から回路形成を知るには、生理学的な機能変化と形態学的な観察を結びつける分子レベルでの解析が非常に重要である。ニューロプシンは記憶形成のモデル動物内で誘導される一方(1995J.Neurosci.15:5088-5097)、ファイブロネクチンのような形態保持に重要であると考えられている細胞接着因子を切断する(1998JBC.273:11189-11196)。従って生理学的、及び形態学的にも重要であると示唆される本蛋白質の結合タンパク質、及びその基質やインヒビターを検索することは、回路形成のカスケードを知る上で、極めて重要である。本研究の目的は、ニューロプシン,蛋白質の結合蛋白質及び、標的となる基質及びインヒビターを同定し、神経回路形成及びその発達に関わる一連のカスケードを明らかにする事である。平成9年度は、マウス海馬の可溶性画分内で2種のニューロプシン結合蛋白質の検出に成功し、これらはSDS耐性の結合状態を示した。今年度は、これら結合タンパク質の精製に成功し、SDS電気泳動-銀染色で単一バンドとした。現在、ペプチドシークエンスを行っているところである。今後、これをもとに遺伝子のクローニングを行い、同時に抗体の作製、新しく得た遺伝子今用いて、バキュロウイルスによるrニューロプシン蛋白質を作製し、ニューロプシンとの結合機構及び、タンパク分解酵素活性への影響を解明する。
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