Ca^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(カムキナーゼII)は、生後の脳の発達過程において、神経回路形成が盛んになる時期に、神経特異的に発現が急速に高まることが知られている。カムキナーゼII遺伝子の転写調節領域の構造、および、転写調節因子の構造と作用などを調べることは、脳特異的、発達段階特異的な遺伝子発現の機構を分子レベルで明らかにし、脳の発達における神経回路の組織化を制御する分子機構の理解を深めるために重要である。本研究では、カムキナーゼII遺伝子の構造と転写調節領域を解析し、以下のことが明らかとなった。(1)本酵素の遺伝子構造の解明に成功し、哺乳類のカムキナーゼII遺伝子の全体構造が始めて明らかとなった。αカムキナーゼIIcDNAのコーディング領域は約1.4kbpであるが、遺伝子は全長50kbp以上におよぶ巨大なものであり、18個のエキソンに分断されるという複雑な構造をもつ。(2)αカムキナーゼII遺伝子の転写調節領域と考えられる部位をルシフェラーゼ遺伝子に接続し、レポーター遺伝子を構築した。これを、従来の神経芽細胞(Nb2a)、および、新しく株化したNF83細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定し転写に必要な領域を解析した。その結果、転写開始部位の上流約180bpに、神経細胞に特異的な強いプロモーター活性が存在することが明かになった。(3)さらに上流を含む場合にはプロモーター活性が抑制されサイレンサーエレメントの存在が予測された。
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