研究概要 |
(1) グルタミン酸受容体発現とカルシウム結合蛋白発現の発現相関 ラット大脳皮質初代培養神経細胞への神経栄養因子の添加による、グルタミン酸受容体発現とカルシウム結合蛋白発現の変動を解析した。その結果、BDNF添加により、GluR1,2/3の蛋白発現が増加すること、GuR2に対するGluRl,3の量が増加することを、ウエスタンブロット解析により見い出した。このことは、AMPA受容体の、特にカルシウム透過性のタイプの発現が増加したことを示唆している。そこで、AMPA刺激によるAMPA受容体チャネルを介する細胞内のカルシウム上昇を調べた。この際、ブロッカーによって、膜電位依存性カルシウムチャネル、NMDAチャネルを介したカウシウム流入は阻害している。その結果、BDNF処理によって、カルシウム上昇の強い細胞の割合が増加していることを明らかにした。また、BDNF処理によって、calbindinD28K陽性細胞が増加し、かつウエスタンブロットによっても蛋白の増加が検出された。以上の事は、カルシウム透過型AMPA受容体とcalbindinD28Kが機能的に相関していることを示唆している。 (2) グルタミン酸受容体とカルシウム結合蛋白の発現相関の、LTPを含むシナプス伝達機構における機能的意義の解明 外来遺伝子を過剰発現させることで、in vivoにおける機能を明らかにすることを目指している。これまでアデノウイルスベクターを用いる方法を検討し、小脳皮質注入により、橋核ニューロンに逆行性に効率よく外来遺伝子を導入する系を確立している。そこで、calbindinD28K発現アデノウイルス、カルシウム透過型変異体GluR2Q発現アデノウイルスを作製した。後者が後シナプスレベルで機能し、シナプス伝達をカルシウム透過型に変容できることは、須藤らによって明らかにされた。
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