プロトカドヘリンは、カドヘリンスーパーファミリーに属する細胞間接着分子であり、特に中枢神経系で特異的に発現しているものが多い。我々は、これまでに、OL-プロトカドヘリンと命名した新規のプロトカドヘリンを同定し、その基本的性質を明らかにした。さらに、発現を解析したところ、OL-プロトカドヘリンは神経回路形成に密接に関与していることが示唆された。そこでは、OL-プロトカドヘリンがシナプス結合に関与する可能性が考えられた。そこで、シナプスとの関連を検討した。 まず、タンパクの分布を調べてみると、OL-プロトカドヘリンタンパクは臭球ではシナプス形成の場であるグロメルラスに局在することがわかった。また、生後5日の小脳では、下オリーブ核からの登上線維がプルキンエ細胞とシナプスを形成することが知られているが、ちょうどこの時期のプルキンエ細胞と下オリーブ核はともにOL-プロトカドヘリン発現しているばかりか、そのタンパクはプルキンエ細胞の周囲に分布していた。これらの分布は、OL-プロトカドヘリンがシナプスに局在することを示唆していた。しかし、初代培養細胞でのタンパクの局在を調べたところ、非常に細かな顆粒状にシグナルが見られたが、これはシナプトフィジンの局在とは一致しなかった。 一方、OL-プロトカドヘリンのC末端部分はPDZドメインの認識配列とよく似ていることから、シナプスに局在するPSD95との結合の可能性が考えられた。実際にPSD95で免疫沈降すると、わずかながらOL-プロトカドヘリンが共沈してくることが明らかになった。現在、OL-プロトカドヘリンとPSD95のトランスフェクタントを作成中で、両者の局在の変化や結合性を解析することにより、この問題を解決したいと考えている。
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