T4ファージの尾繊維及び小尾繊維の形成に必須でファージにコードされている分子シャペロンgp57A(gp=gene product、57Aは遺伝子名)につき、これまでに以下のことが明らかになった。本タンパク質は円2色性(CD)スペクトルによれば約94%がαヘリックスからなり、沈降平衡法に基づく超遠心分析の結果、4量体を形成していることが明らかとなった。超遠心分析の結果と配列解析から本蛋白質は4ヘリックスバンドルを形成する細長い分子と考えられる。gp57Aは熱変性やグアニジン塩酸などの変性剤による変性がきわめて可逆的であり、示差走査型微少熱量測定(DSC)および円2色性(CD)により、1つの中間体を経る三状態転移が観測された。現在の問題点はgp57Aがターゲット蛋白質gp12とは直接相互作用しないことがほぼ明らかになったことである。本蛋白質を共発現しないとgp12が活性を持たないことから、本蛋白質がgp12の折りたたみに必須であることは明らかである。おそらく、gp57Aはいわゆるco-シャペロンを必要とすると考えられる。一昨年報告された大腸菌GrpEはやはり4ヘリックスバンドルを持ちgp57A類似した構造を持つように思われるので、gp57AにもGrpEのDnaKに対応するco-シャペロンの存在が予想される。そこで、Far-Westernプロット法によりco-シャペロンの検索を行ったが、明快な答えを得ることができなかった。現在、以下のアプローチによってco-シャペロンの検索を行っている。即ち、大腸菌に変異を持ち、57Aアンバー株の増殖可能な変異株が報告されているので、これを新たに作成し、この変異株の変異部位をマッピングすることによってgp57Aのco-シャペロンを検索する計画を進めている。
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