現存する蛋白質の構造は、それらが様々な構造ブロックを組み合わせて作られたことを物語っている。この研究では、ヘモグロビンの幾つかのモジュールをα鎖とβ鎖の間で交換して作られたキメラヘモグロビンの結晶構造解析を通じて、構造ブロックの組み替えが蛋白質の立体構造に与える影響と、その蛋白質進化における意義を考察した。結果として2種類のキメラヘモグロビン(モジュールM4置換キメラとモジュールm7置換キメラ)について構造解析に成功した。モジュールM4置換キメラは、ヒトヘモグロビンβ鎖のM4をα鎖のもので置換した蛋白質である。この蛋白質の結晶化は、キメラヘモグロビンのコンピュータモデルを利用した立体障害予測に基づいて、ポイントミューテーション(F133V)を導入することにより成功し、2.5A分解能で分子モデル構築を行った。モジュールm7置換キメラはサブモジュールm7を同様に置換したものであり、2.0A分解能で構造決定した。これらの構造から、モジュールのようなコンパクトな部分構造は比較的構造が安定であり、蛋白質の構築ブロックとして機能できることが示唆された。また、ブロックの組み替えに伴って生じる界面の不適合は側鎖の構造変化によって緩和されると考えられる。
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