1. NMRによるウマβラクトグロブリン(ELG)の天然構造解析 ^<15>N標識ELGの異種核相関三次元NMR測定を行い、天然状態でのNMR信号の帰属をほぼ完了した。化学シフト、核オーバーハウザー効果の解析により推定されるELGの立体構造はウシβラクトグロブリンの結晶構造とよく一致した。 2. ELGのモルテン・グロビュール(MG)構造の解析 MG状態で主鎖アミドプロトンの水素交換を行った後、天然構造へとリフォールドさせて、二次元NMRスペクトルを測定する方法により、ELGのMGで水素結合を形成している領域を同定した。その結果、天然構造においてA、F、G、Hストランドを形成する領域、およびC末端のへリックスに相当する領域に水素交換反応に対する保護がみられ、この領域がMG状態においても天然と同様の立体構造を形成しているものと推定された。また、天然構造でCストランドに相当する領域には弱いけれども一次構造に沿って連続的に水素交換に対する保護が観測され、MG状態ではこの領域に非天然のαヘリックスが形成されている可能性が示唆された。この点を確認するため、Proline ScanningMutagenesis実験を行ったが、プロリン置換体の多くは天然構造を獲得できず、ジスルフィド結合異性体を分離するのが困難であったため、Cys66とCys160をAlaに置換した変異体を作成し、これをベースにプロリン置換を導入する実験を行っている。
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