アブラナ科植物では1つの種内にSハプロタイプが50〜100種類あるといわれているが、これまでSLGについては報告が多いものの、SRKの塩基配列が解析されているものはその中のごく一部に過ぎなかった。本研究でSRKのS領域の塩基配列をBrassica oleraceaでは新たに23種類、Brassica rapaでは12種類、SLGについてはB.oleraceaで新たに11種類決定し、既に報告されているSRK10種類SLG43種類と比較した。 推定アミノ酸配列をもとにNJ法で系統樹を作成したところ、同じハプロタイプのSLGとSRKが最も近接した対を作ったものは、40中18あった。同じハプロタイプのSLGとSRKが似ていて、同じ花粉リガンドを認識するというこれまでの考えは、半数程度のSハプロタイプについては当てはまると言える。しかし、残り半数のSハプロタイプではSLGとSRKが似ておらず、これらのSLGがSRKと同じ花粉リガンドに結合するとするモデルを支持しない。種内で異なるSハプロタイプが極めて類似したSLGを有する例があり、これらではSRKのS領域は互いに異なっていた。種内でSRKが極めて類似するSハプロタイプの組み合わせは見られなかった。このことはSRKが自己認識に際し主要な役割を果たすことを示唆し、SLGの機能については疑問がもたれた。 B.rapaとB.oleraceaの間でSLGが極めて類似するSハプロタイプが5組み合わせあったが、これらでは、SRKのS領域も互いに類似していた。これまで、SLGの解析から、Sハプロタイプの分化はB.rapaとB.oleraceaの種分化以前に起こったと主張されてきたが、SRKのS領域の解析によっても同じことが言える。これら5組み合わせは、種分化以前には同一のハプロタイプであったものと推測される。
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