研究概要 |
キュウリの性表現は茎頂部の内生エチレンレベルにより制御される。このエチレンレベルの制御機構を明らかにする目的で2種のACC合成酵素遺伝子(CS-ACS1G,CS-ACS2)の茎頂部における発現を調べた。CS-ACS2は茎頂部における発現量が性表現と相関を示すことを明らかにしており、CS-ACS1Gはキュウリの雌性発現を制御するF遺伝子座とリンクする事が示されている。発現解析の結果、混性型キュウリの茎頂部でCS-ACS2のみが発現しており、その発現パターンは性発現パターンと相関を示した。以上の結果より、混性型キュウリの雌花発現がCS-ACS2により制御される可能性が示唆された。一方、CS-ACS1Gの発現はF遺伝子を持つキュウリの茎頂部でのみ検出され、その発現量はF遺伝子のコピー数と相関を示した。この結果より、CS-ACS1GがF遺伝子自身であり、雌性型キュウリは茎頂部でCS-ACS1Gが全雌花で発現するようになったために、雌花のみをつけるようになることが考えられた。 一方、キュウリの雌花誘導におけるエチレンの作用機作を明らかにするために、キュウリの茎頂部において、エチレンにより発現の変化する遺伝子をDifferential Display法により単離し、その発現解析を行った。その結果、ERAF-16と名付けた遺伝子が雌花誘導時に特異的に発現していた。この遺伝子は既知の遺伝子との相同性はなく、in situ hybridizationにより、性が決定されて形態的に差の観察されるようになった花芽の皮層細胞及び、花柄の部分で発現が観察された。また、特に雌花では子房になる部分で強く観察された。以上の結果は、この遺伝子が雌花形成課程で何らかの機能を有している可能性を示唆しており、エチレンによる雌花分化において、エチレンは遺伝子発現の制御を介して雌花発現を制御することが予想された。
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