リンカーヒストンHlが核クロマチンに位置的にも化学量論的にも正確に結合すること、すなわちクロマトソームが適切に形成されることは、クロマチンの構造、機能両面の調節において重要であると考えられる。しかしながら、クロマトソームの形成を制御するメカニズムについてはほとんど解析がなされておらず、不明な点が多い。既に、コアヒストンについては酸性のキャリアータンパク質が存在し、これによってコアヒストンのDNAへの結合が調節されていることが、アフリカツメガエル卵において示されている。そこで本研究では、アフリカツメガエル卵の無細胞系を用いて、ヒストンHlについてもクロマチンへの結合を調節するようなキャリアー蛋白質が存在するかを検討した。 ツメガエル卵の細胞質抽出液を生理的塩濃度の緩衝液を用いてゲル濾過し、特異抗体を用いてHlの溶出パターンを調べたところ、精製したHlよりも高分子側に溶出された。また、Hlは強塩基性であるため、精製したHlはnative-PAGEでは泳動されないのに対し、卵抽出液中のHlは泳動され、ウエスタン解析により、単一のバンドとして検出された。したがって、生理的条件下では、Hlは他の成分と複合体を形成し、電荷が中和されていることが示唆された。そこで、ツメガエル卵のヒストンHlのN末およC末、20個のアミノ酸に対する特異抗体を作製し、Hlを含むゲル濾過フラクションを用いて免疫沈降をおこなったところ、抗N末抗体では、Hlと共に43、56、60Kのタンパク質が、抗C末抗体では、56Kと60Kのタンパク質が再現性よく共沈した。これらの免疫沈降は、抗原ペプチドの共有下では完全に阻害された。この結果から、Hlには、少なくとも3種類のタンパク質が結合していること、また、このうち43Kの成分はHlのC末に結合していることが示唆された。
|