核膜とゴルジ体は有糸分裂時に分解・小胞化し、分裂終期に小胞が融合して再形成される。ゴルジ体の形成にはVCP/p97とNSFという2つのATPascが関与していることが示されているが、核膜の形成機構はまだよくわかっていない。VCP/p97の酵母のホモログはCDC48pであり、このタンパク質はカリオガミー(核膜融合)に関与する。我々はNSFがゴルジ体以外に核膜にも存在していることを見い出した。本研究の目的はVCP/p97とNSFが核膜融合に関与しているかどうかを調べることであり、本年度は以下の研究成果を得た。 1) NSFは膜表在性のSNAPおよび膜内在性のSNARE(syntaxinやSNAP-25などのサブユニットから構成される)と複合体を形成して膜融合反応に関与する。抗SNAP抗体および抗SNAP-25抗体を作成し、それらの抗体がアフリカツメガエルの卵母細胞抽出液を用いたin vitroの核膜融合反応を阻害することを示した。抗体で認識されるアフリカツメガエルのタンパク質は既知のSNAP-25より約7kDa大きく、新規な分子種の可能性が考えられたので、現在このタンパク質のクローニングを進めている。 2) NSFに対するモノクローン抗体2E5はHeLa細胞の核膜およびゴルジ膜のNSFを認識したが、モノクローン抗体2C8は核膜のNSFを認識しなかった。このことは核膜とゴルジ膜のNSFが異なる分子種である可能性を示唆している。 3) VCP/p97は膜表在性のp47を介して膜内在性サブユニットのsyntaxin5に結合する。一方、CDC48pの膜内在性サブユニットはUfelp(このタンパク質もsyntaxinの一種)である。酵母のtwo-hybrid systemを用いてヒトのUfelpを同定した。現在、ヒトUfelpがVCPと結合するかどうかを調べている。
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