三岐腸類プラナリアの中には、同一種の中に無性生殖のみを行う系統、有性生殖のみを行う系統及び無性生殖と有性生殖の両方を行う能力を持ち、環境に応じて切り替えを行う系統が混在している例が知られている。この実験的な有性生殖の誘導は、無性個体の低温処理、有性個体の移植、有性個体の投餌により起こすことができることが知られている。 我々は、有性個体と無性個体が混在しており相互に転換が可能なプラナリアの1種、リュウキュウナミウズムシの無性系クローンOH株に、有性生殖のみにより増殖するイズミオオウズムシを投餌することにより、短期間に効率よく有性生殖化を誘導する系を確立した。この系より、有性生殖化の過程の組織学的に5つの段階にわけられること、有性生殖の回避不能点は精巣の形成が始まる直前にあり、この段階を越えた個体は有性個体の投餌を停止しても自立的に有性化することが明らかとした。 また、性誘導の初期に有性生殖誘導因子が作用する無性個体内の因子を検出するために、Differential Display法により、無性個体で発現し、性誘導初期に発現が減少する2つの遺伝子を検出したが、これらの塩基配列は既知の遺伝子と相同性はなかった。有性生殖の回避不能点の分化マーカーとなる遺伝子を単離するために、有性生殖の回避不能点のcDNAライブラリーを構築し、無性個体のcDNAとの間でDifferential Screening法を行うことにより、特異的に発現する3つのクローンが単離した。これらのうち2つはアクチン様タンパクARP3およびニコチンアミドヌクレオチド(NAD(P))トランスヒドロゲナーゼと高い相同性があった。残る1クローンは547アミノ酸残基からなるORFを持っていたが、これと似た配列を持つ遺伝子やタンパク質はなく、新規の遺伝子であることがわかった。
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