生殖巣原基へ到着後の始原生殖細胞は、雄においては前精原細胞として体細胞分裂期におけるG0停止、雌にわいては卵母細胞への分化、すなわち第一減数分裂初期への移行とMI停止が行われる。未分化幹細胞と共有する多くの表面抗原は、これらの胎仔期には徐々に消失するのでこの時期以降の解析には適さない。今回は平面培養下での始原生殖細胞の減数分裂移行の解析系の確立を行い、フィーダー細胞上での培養と特異抗体による減数分裂の検出を用いることによって次のことを見いだした。PGCにおける減数分裂期蛋白質の発現開始に生殖巣体細胞が必須ではない事、体細胞分裂から減数分裂への移行はコロニーを作る生殖細胞間で同調する傾向のある事、そしてPGCの増殖因子であるLIF-gp130シグナルが体細胞分裂から減数分裂への移行を抑制することを発見した。一方、胎仔生殖巣内では雌雄生殖細胞と雌雄体細胞の相互作用によって性分化の進行が制御されており、精巣決定遺伝子Sryが体細胞で発現した後に遺伝子連鎖が起きる。これらの遺伝子機構を解析するために、性分化が起きる時期の胎仔卵巣と精巣について、サブトラクション法による遺伝子検索を行って、新規遺伝子を得た。これらの遺伝子の中で、bHLH型転写因子であるNephgonadinとCRESPについて、塩基配列と遺伝子構造を調べ、生殖細胞と生殖巣の発生と性分化に伴う発現パターンの解析を行った。Nephgonadinについては、生殖巣分化に重要な役割を果たしているAd4BP/SF-1遺伝子の発現制御を行っている可能性を調べるために、培養細胞へのトランスフェクションによるCATアッセイ法を用いて遺伝子発現制御について解析するとともに、トランスジェニックマウスの作成による機能解析実験を開始した。
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