研究概要 |
ベンゼン環上に様々な置換基を有するジベンゾイルヒドラジン類縁体の鱗翅目昆虫と鞘翅目昆虫に対する殺虫活性を調べた.鱗翅目昆虫であるニカメイチュウ(Chilo suppressalis)およびヨトウムシ(Spodoptera exguia)に対する殺虫活性を比較したところ,殺虫活性に及ぼすベンゼン環上の置換基効果は両昆虫間で変らないことが明らかとなった.一方,鞘翅目昆虫であるコロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)に対する殺虫活性に及ぼす置換基効果は鱗翅目昆虫に対するそれと大きく異なることが明らかになった.置換基効果を各種置換基定数を用いて定量的に解析したところ,鱗翅目昆虫に対する殺虫活性は,分子全体の疎水性と共に上昇し,嵩高い置換基の導入は活性にとって不利であることが明らかとなった.一方,鞘翅目昆虫に対する活性に及ぼす置換基効果は複雑で,モノ置換体では分子の疎水性がある値(置換位置によって異なる)よりも小さい場合には疎水性の増大と共に上昇するが,ジ置換体では疎水性の上昇につれて活性の低下するという疎水性について2相性(上昇部,下降部)の存在することがわかった.さらに興味深いことに,疎水性の高いモノ置換体は,ジ置換体とあわせて解析できること,パラ位に水素結合性置換基が存在すると活性上昇にとって好ましいことが分かった.また,脱皮ホルモン活性をニカメイチュウ培養表皮を用いて定量的に測定し,活性に及ぼす置換基効果は殺虫活性に及ぼすそれとほとんど変らないことを明らかにした.さらに,ニカメイチュウからエクダイソン受容体を調製し,ポナステロンのトリチウム標識体を用いて各種化合物の受容体結合活性を評価することを試みたが、現在のところ受容体-リガンドの結合を評価できるに至っていない.
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