ラット肝臓の発癌において発現の増加する遺伝子の一つとして298アミノ酸をコードするHRP-1を同定した。本蛋白質はいくつかの細胞骨格系蛋白質、特に微小管・分裂装置関連蛋白質と有意な相同性を示し、蛋白質の全長にわたり様々なセリン・スレオニンキナーゼのりリン酸化部位を持っていた。HRP-1は発癌操作開始1カ月目から発現が上昇し、再生肝手術後の肝臓においても発現が増加していた。HRP-1の細胞内局在を間接免疫蛍光抗体法により解析したところ、肝細胞由来細胞株において中心体局在性が認められたが、その中心体局在性は、分裂期の中期から後期にわたって観察されなくなった。HRP-1の発現は肝細胞特異的である事が示唆され、ラット組織におけるHRP-1のmRNA・蛋白質レベルの発現も肝臓・腎臓特異的であった。過剰発現したHRP-1が微小管と局在を共にしたことより、HRP-1と微小管との結合性が考えられた。in vitro結合実験の結果HRP-1と微小管が結合することが示され、HRP-1は新規の微小管結合蛋白質MAPであることが明かとなった。HRP-1とガンマチュブリンの直接結合が認めれたことより、HRP-1がガンマチューブリンと微小管に結合し、組織特異的な機能を果たすと考えられる。
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