大腸菌を宿主として複製するミニFの厳密なDNA複生調節を担うものは複製開始蛋白質(RepE)とincC領域、また未知の負の調節因子(存在?)等である。incC領域はミニFori2に対してcis位置にある場合はIncompatibilityとして、trans位置にある場合はミニFのコピー数調節に重要な役割を担っている。いづれの場合もミニFのDNA複製開始を抑制する。つまりこの領域はDNA複製の負の制御に重要な役割を担っている。この機構に関しでTitration modelが提唱されていたが、最近の我々による新たな知見(RepEの分子シャペロンによる活性化等)を包括したモデルが必要になった。incC領域による阻害機構の詳細を明らかにすることが当面の目的である。平成9年度にincC領域の変異体の解析からTitration modelでは説明出来ないいくつかの実験結果を得た。 平成10年度にはLigation Assayによって、incCイテロン-RepEがori2イテロン-RepEと相互作用しクロスリンク構造を作ることを明らかにした。つまりFブラスミドにおいてもイテロンによる複製開始抑制はF類似プラスミドでみられたと同様にHand cuffing作業仮説で説明出来ることがわかった。我々がみつけた新しいことはこのクロスリンク構造形成にはRepEの二量体形成ドメインか関与していること、incCイテロンにRepEが正常に結合することが必要であること、incCイテロン-RepEとori2イテロン-RepEがori2イテロン-RepEとori2イテロン-RepE、incCイテロン-RepEとincCイテロン-RepE間よりも抑制効果が大であることを明らかにした。研究計画に予定していたin vitroのDNA複製系でincC領域の効果を調べる実験については、系が動きだしたところである。 このincCイテロンによるミニFのDNA複製阻害からの解除に関与する因子は最初予定していた宿主菌の変異体をとる方法ではなく、生化学的手法を用いて候補となるものを分離し、現在解析中である。
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