カルパインは、カルシウムシグナル伝達系に位置するカルシウム依存性、限定分解型の細胞内プロテアーゼである。本研究では、まず、カルパインのゲルゾリンに対する作用とその意義のin vitroでの生化学的解析を行い、カルパインがゲルゾリンファミリーのアクチン結合タンパク質を1カ所で切断し、カルシウム感受性とPIP_2感受性が異なる2つの断片を生成し、新たな細胞骨格制御因子を作り出すことを見出した。また、ショウジョウバエの第1にカルパインのスプライス・バリアントの活性を有する形での大腸菌発現系を確立し、その生化学的諸性質を明らかにしたほか、これに対する特異的抗体を作製した。さらに、全長のショウジョウバエの第1のカルパインを熱ショックによって発現する遺伝子導入株を確立した。また、以上の解析とは別に、ショウジョウバエにおける第2のカルパインの突然変異体のスクリーニングを行い、ゲノムプロジェクトで確立されつつある第3染色体Pエレメント挿入致死ラインの一つから、カルパイン遺伝子の第2のカルパイン遺伝子の5‘-非翻訳領域にPエレメントが挿入した株を見出した。これは、組織普遍的カルパインの生理機能解析の突破口になる初めての欠失変異体の例となる。また、カルパイン類似遺伝子のスクリーニングの過程から見いだされた遺伝子で、4つの領域を持つなど全体構造はカルパインと類似していながら活性中心残基を持たないプロテアーゼ様タンパク質をコードする遺伝子(Ca1p14B)の産物に関して、特異的抗体を作製し解析を始めた。
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