細胞増殖因子が細胞表面の受容体に作用すると、両者は複合体として細胞内に内在化・分解され、down-regulationされる。このプロセスは増殖シグナルの負の制御機構として重要な役割を担っていると考えられている。我々はこのプロセスに新規シグナル伝達分子Hrs-Hbp複合体が関与すること、その働きにはHbpのSH3ドメインに結合する蛋白質が必須であることを既に示している。このたびFar-Western法により、HbpのSH3ドメイン結合蛋白質を検索した。 GSTとの融合蛋白質の形で大腸菌に発現したHbpをプローブとしてマウス肝臓cDNAライブラリーをスクリーニングした結果、脱ユビキチン化酵素UBP(ubiquitin-specific peptidase)ファミリーに属する蛋白質のcDNA断片が単離された。引き続き、全長のcDNAをクローニングすることにより、この蛋白質の全アミノ酸配列(1080残基)を決定した。アミノ酸配列の相同性の検討により、この蛋白質はすでにヒトで同定されているUBP-Yのマウスホモログであることがわかった(以下、mUBP-Yと略す)。ノザンブロッティング解析の結果、mUBP-Yは調べた限りのすべての組織に発現が確認でき、ubiquitousな蛋白質であることが考えられた。これは、結合パートナーであるHbpの発現パターンと一致するものである。GSTとの融合蛋白質を免疫原としてウサギのポリクローナル抗体を取得し、イムノブロッティング解析を行ったところ、mUBP-Yはl40kDaのバンドとして検出された。GST融合蛋白質を用いたpull-down assayによりHbp上のUBP-Y結合部位はSH3ドメインであると確認できた。また、UBP-Y上でHbpのSH3ドメインと結合する領域は分子の中央部のブロリン・リッチ配列であることを見い出した。現在、mUBP-Yの変異体を培養細胞に発現し、細胞増殖因子および受容体の細胞内分解への影響を検討中である。
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