研究概要 |
発ガン剤や抗ガン剤を含む多様なDNA損傷ストレスにたいする細胞の応答機構における細胞内プロテアーゼの役割について明らかにするため、これらストレスによって活性化されてストレス応答に重要な役割を果たしていると考えられているNF-κBおよびp53転写因子の活性化のシグナル伝達機構におけるプロテアーゼの役割について研究し、現在までに次のような成果を上げた。(1)NF-κBの活性化には、そのインヒビターであるIκBαのN末部のセリン残基の燐酸化に存在した蛋白分解が必須であると考えられている。我々はFK506のような非定型的なNF-κBの活性化刺激では、IL-1/TNF-αの場合と異なり、N末部のユビキチン化部位に非依存性にプロテアソームによる分解が起こり、またN末部のセリン残基の変異によって分解はブロックされるが、燐酸化したN末部のセリン残基に対する抗体や、in vitro kinase assayによって燐酸化が検出されないという興味ある結果が得られた。(2)細胞の増殖制御、特にアポトーシスに重要な役割を果たしているp53について、我々は、先天性小脳失調生毛細血管拡張症の原因遺伝子(ATM)ファミリーがp53に結合し、p53蛋白の安定化に関与することを明らかにした。さらに、現在p53のさまざまな変異体(Ser-15,Ser-315,Ser-376,Ser-378の変異体をふくむ)での解析を進めており、p53のどの部位がATMによるp53蛋白の安定化に関与しているのか、またその過程にMDM2が関与しているのか、等について検討していく。
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