アポトーシスの実行におけるCaspaseの重要性が示唆されおり、その基質蛋白質を同定することはアポトーシスを理解するために必須の課題である。我々はこれまでにCaspaseの未知の基質蛋白質を同定するためにyeast two-hybrid systemを利用したクローニング方法を確立した。本法ではCaspaseの2つのサブユニットを別々のプロモーター制御下において発現させ、小サブユニットをLexA DNA結合領域と融合させた。さらにyeast内での酵素一基質複合体の安定性を確保するために、基質蛋白質が分解されないように酵素の活性中心に点突然変異を導入した。以上のプラスミドをbaitとしてマウス胎児、及びヒト胸腺ライブラリーをスクリーニングし、その翻訳産物がin vitroで活性型Caspaseにより切断される幾つかのクローンを得た。これらの中にはゲルソリンをコードするcDNAを持つクローンが複数含まれており、活性型Caspase-3によってDXXD配列で切断された。ゲルソリンはカルシウム依存的にアクチン繊維に結合してアクチンの重合脱重合を調節することにより細胞の形態変化、運動性に関与するが、アポトーシス実行時にはCaspaseの切断によりカルシウム非依存的にアクチン繊維を切断し、細胞の形態変化の一端を担うと考えられる。また、ゲルソリンの過剰発現によりアポトーシスが抑制されるが、その機構の一つがCaspaseの活性化に先立って起こるミトコンドリアから細胞質へのチトクロームcの遊離の抑制にあることを明らかにした。
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