FtsHプロテアーゼがもつAAA型ATPaseを特徴づけるSRHモチーフが、FtsHのATPase活性に重要であることを明らかにした。その結果と、最近発表されたAAA蛋白の一つNSFの結晶構造をもとに、ATP加水分解におけるSRHの機能を説明するモデルを提唱した。このモデルにおいて、FtsHはオリゴマーを形成し、ATPを結合しているFtsHのSRHとその隣に位置するFtsHのSRHがATPのγリン酸基と相互作用し、共にATPの加水分解に関わる。特に、隣の分子のSRHのアルギニン残基は、低分子量G蛋白のパートナー蛋白GAPに存在し、GTPの加水分解に働くアルギニンフインガーと機能的に類似している。FtsHの構造解析とシャペロン機能の解析のため、ATPaseドメインだけを分離したところ、これらはモノマーとして存在し、ATPase活性を示さなかった。このこともFtsHのATPase活性には、オリゴマー形成が必要であるという考えと一致する。なお、FtsHがオリゴマーを形成することは、生化学的にも電顕観察でも証明されており、N末端側の膜貫通配列とペリプラズム領域が重要である。カゼインが、FtsHの良い基質となることを発見し、試験管内プロテアーゼ活性のアッセイ系を確立できた。この系において、FtsHのNTP分解活性とプロテアーゼ活性には強い相関関係が認められた。このNTP分解活性とプロテアーゼ活性の相関関係は、ペプチド基質についても観察されたので、ATP(NTP)の加水分解は、蛋白基質の巻き戻しに必要であるという考えでは説明しにくい。カゼインが基質として使えることが分かり、今後基質とFtsHの相互作用についての詳細な解析の道が開かれた。
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