ビタミンB_6の助酵素型ピリドキサール燐酸は本来、多くのアミノ酸代謝の助酵素として作用している事が明らかになっている。然し、システインプロテアーゼ群を阻害するとの報告はない。勝沼らはピリドキサール燐酸のナルデヒド基がカテプシン群の-SHと結合し、チオセミアセタールを形成して阻害することを明らかにした。阻害濃度は10^<-4>Mと濃いがin vivoでも薬用量では阻害を生体内でも起こし得る。此れは全てのカテプシン、B、L、S、K、Cをほぼ同程度に阻害する。更に人工的に3位のメチル燐酸エステルをプロピオン酸にした誘導体(CLIK-071)はそのまま細胞内に入れて、しかもピリドキサール燐酸と同程度の阻害を全てのカテプシン群に対して示した。我々は更に此の3位プロピオン酸誘導体め6位をイソロイシール・プロリン等に変えた。これはカテプシンKとSに特異性を持ち、しかも阻害力が著しく上昇して、10^<-7>Mで阻害をする。又これらは腹腔内注射でも、よく細胞内に入り、カテプシンKを特異的に阻害する。此等は非常によく細胞内に取込まれるので、ピリドキサールの3-プロピオネートやピリドキサールは卵アルブミンを抗原とする免疫応答をよく抑制し、IgE産生とサイトカイン、IL-4産生を抑制した。また6位誘導体のピリドキサール・6-プロピオネートも細胞内によく取込まれて、骨吸収を抑制した。骨ピット形成と大腸癌移植によるカルバリアからのCa逸脱による高カルシウム血症をも抑制した。これらのデータをもとにして更に強力なピリドキサール誘導体の合成開発を進めている。
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