テロメアは線状染色体の末端を構成するDNA・タンパク質複合体であり、その正常な機能の維持が染色体機能にとって必須であることが明らかになっている。我々は分裂酵母を材料に、テロメアDNA機能構造の維持機構の分子レベルでの解析を行っている。これまでに、細胞内でのDNA損傷への応答に関与するチェックポイント遺伝子のうち、実際にDNAを直接監視するディテクター分子であるrad1^+、rad17^+、そのシグナルを下流に伝えるトランスミッターとして機能するrad3^+、rad26^+がテロメア長の維持に関わっていることを示してきた。rad3^+によるシグナルは最終的にはCdc2の活性を抑制し、細胞周期の停止を導く。しかし、rad3などの変異株で見られるテロメア長の異常は細胞周期の停止によっては抑圧されない。このことからテロメア維持には細胞周期調節以外のrad3^+の標的因子が関わっていることが明らかになった。このことはrad3^+の下流で働き、Cdc2の活性を調節するプロテインキナーゼChk1^+、cds1^+を同時に破壊した株でもテロメア長が正常であることからも支持された。 rad3^+のテロメア長維持に関わる機能の解析のため、Rad3タンパク質の中央の調節ドメインにランダムな突然変異を導入し、種々の特異的アレルの単離を試みた。その結果、テロメア特異的な表現型を示すものの細胞周期チェックポイント機能が正常なアレル、Rad3のすべての機能が温度感受性を示すアレルが単離された。これらのアレルを用いることで、Rad3の機能欠損によるテロメア短縮の経時変化を検討した。その結果、短縮には約30回の分裂が必要であるが、正常な長さへの復帰は直ちにおこることを見出した。現在、これらのアレルを用い、Rad3の標的分子の単離を試みている。
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