出芽酵母をモデル生物として染色体再編を特異的に検出する系を構築し、染色体切断点を塩基配列レベルで解析する方法を確立した。これらの方法を用いて野生株での自然発生的な染色体異常・染色体再編についての解析を行った。 1. 染色体再編検出系と染色体再編・染色体異常の分類 二倍休出芽酵母の片方の染色体にのみ存在する遺伝マーカーの喪失を指標にすることで、様々な染色体変化を充分に検出できることが判った。複数の遺伝マーカーによる染色体再編の遺伝学的分類や、パルスフィールド電気泳動やPCRによる染色体形態の解析により、染色体変化についてその発生メカニズムに基づいた分類を行い得る解析系とした。 2. 染色体再編領域の同定法と切断点の決定 指標としている染色体を網羅する様に配列特異的なサイトを選定し、それぞれのサイトについて定量的にPCRを行うことで、各該当サイトの細胞内でのコピー数を決定できることが判った。蛍光ラベルしたプライマーを用い、DNA配列自動解析装置を用いて産物量を定量することで、複数のサイトについて同時に確実な定量を行う事が可能になり、多数の細胞についての解析も容易になった。 3. 野生株での自然発生的染色体異常 第III染色体下腕中央に挿入したURA3マーカーの喪失の発生率は世代当たり1.1×10^<-5>であり、その内訳は多い順に染色体喪失(8%)、相同染色体間の交叉(34%)、相同染色体間の不等交叉(4.5%)、単一染色体内欠失(2.6%)、転座(1.0%)、遺伝子変換(0.3%)となった。また、染色体間の相互作用にリンクして生じたと考えられる染色体喪失例も検出された(2.6%)。単一染色体内で生じた欠失はMAT-HVRの相同配列間での組換えであったのに対し、不等交叉や転座といった染色体間の組換えは主にレトロポゾンTyの配列を利用して生じたものであった。
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