研究概要 |
マラリアは、世界中で2億7000万人の人が感染し、毎年200万人の人が死亡する人類最大の寄生原虫感染症であり、ワクチンの開発とともに新規抗マラリア剤の開発は緊急を要する課題とされている。これまで、薬用植物の伝承薬効をもとに、天然カシノイド成分に抗マラリア作用のあることが明らかにされているが、詳細かつ系統的な研究は行われていなかった。そこで、本研究では天然カシノイドを素材とし広範な化合物を合成し、構造活性相関を系統的に検討することによる新規抗マラリア剤の創製を目指している。 我々は、数種の抗マラリア作用を示す天然カシノイド類がbruceolideを共通部分構造として有していることに着目し、容易に入手可能な生薬″鴉胆子″(Brucea javanica)からbruceolideを高収率で得る方法を確立し、それを素材とする抗マラリア剤の創製を進めてきた。そして、合成した種々の誘導体のなかで、in vitroのアッセイ系で強いマラリア原虫増殖抑制作用(EC_<50>=3.9X10^<-8>M)と宿主モデルに対して高い選択毒性比(410倍)を示す化合物として、3,15-di-O-acetylbruceolide(1)を見出した。 さらに、1のネズミマラリア原虫感染マウスに対する治療効果を本重点班で検定して頂いた結果、1はin vivoにおいても優れた抗マラリア活性(EC_<50>=0.45mg/kg,EC_<90>=1.0mg/kg)を示し、現在臨床薬として用いられているクロロキン(EC_<50>=1.7mg/kg,EC_<90>=3.3mg/kg)よりも優れた作用が認められることを明らかにした。
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