本研究では、生化学的解析に十分耐えうるネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei赤内型)ミトコンドリアの調製法を確立し、その重要な機能の一つである呼吸鎖電子伝達系の生理的意義と宿主ミトコンドリアとの相違点を明らかにすることを目的としている。 すでに昨年度の研究から、従来とは原理の異なる細胞破砕装置を用いてミトコンドリア分画法を検討し、コハク酸酸化活性を保持したミトコンドリア分画を得ることに成功している。とくにN_2 cavitation法によるミトコンドリア分画は、Physcotron法とくらべてコハク酸酸化酵素の比活性が高く、また、電顕形態学的にもよりintactな構造をもつオルガネラが含まれることが明らかになっている。しかしながら、本分画はなお他の粒子も含む分画でありミトコンドリアの生理機能の解析のためにはさらに純度の高い分画を得ることが不可欠である。本年度はこの問題を解決するために密度勾配遠心法を導入し検討したところ、N_2 cavitationによる細胞破砕と、Percollによる密度勾配遠心分画を組み合わせることにより、P.berghei赤内型から呼吸鎖の酵素活性を保持し、しかもオルガネラの形態も比較的保存されているミトコンドリアを高純度で得ることができた。N_2 cavitation法はマイルドな条件で細胞を破砕するために、形態学的にもintactな構造をもつミトコンドリアの調製に適していると考えられる。今後、本標品を用いて膜電位形成能など生理機能の評価、マラリア原虫ミトコンドリアの特異的蛋白の検索等、詳細な研究を行う予定である。
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