研究概要 |
本研究では、マクロファージ(Mφ)が原虫、もしくは原虫感染赤血球を認識する機構の解明の一助として、Mφのスカベンジャーレセプター(SR)のノックアウト(KO)マウスMSR-A(-/-)を用い、KOマウスのネズミマラリア原虫Plasmodium berghei感染における病態を観察した。 KOマウスにおけるネズミマラリア原虫に対する感染抵抗性について、KOマウスMSR-A(-/-)およびその対照のMSR-A(+/+)系を供試動物とし、原虫株としてP.berghei NK65を用いて検討した。 人工感染後、KOマウス群が対照マウス群より早期に死亡した(p=0.021,カプランマイヤー法)。生存したマウスでは、原虫血症のピークが注入感染後5〜7日と2〜3週間の2回観察された。感染6日後までの初期の原虫血症は対照群で高かった。KOマウス群の死亡時期は原虫感染率のピーク後に多かった。原虫感染率と死亡には傾向がなく、原虫血症が高くても耐過する個体があった。 感染5、10および15日後のマウス血清について生化学的検討を行った結果、両群とも早期からの肝機能障害と、腎機能障害が観察された。 感染5、10および15日後のマウス諸臓器について病理学的に観察した。肝臓では、類洞内にはマラリア色素貪食クッパー細胞が多数存在するが、その頻度は明らかKOマウスの方が多かった。脾臓では、マラリア色素貪食像も認められるが、その分布や頻度に両群マウスで差は見られなかった。肺では、肝臓、脾臓に比べれば軽度ではあるが、両群ともに肺胞マクロファージによると思われるマラリア色素の貪食像が認められた。 本研究により、SRがネズミマラリアの防御免疫に機能している可能性が示唆された。また、病理学的および血液生化学的検索から、本モデルがマラリア研究に有用であることがわかった。
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