免疫不全やリンパ腫等の頻発を主病状とするataxia telangiectasia(AT)の原因遺伝子(ATM)の異常がどのような機序によって免疫異常を引き起こすのかは明らかではない。我々はこの点を明らかにするため、ATMの遺伝子ノックアウトB細胞株をトリB細胞株DT-40で作成した。これらのノックアウト細胞株を用い、抗体リセプターのシグナル伝達系、免疫グロブリンL鎖遺伝子の再編成、さらにDNA損傷や組み換えの修復、等におけるATMファミリーの役割について検討した。その結果、ATMノックアウト細胞は放射線に対する細胞応答において、G_2/M期でのチェックポイント機構の異常、染色体断裂数の著しい増加、著しい放射線感受性、等の様々な異常を示した。さらに、ATノックアウト細胞では、geneconversionによるL鎖遺伝子再編成はほぼ正常であると判断されたが、外来性の遺伝子のhomologousあるいはrandam integrationは著しく低下していた。一方、以前の報告とは異なり、ATノックアウト細胞では抗体リセプターからのシグナル伝達によるCaのinfluxは正常に起こり(関西医大黒崎教授との共同研究)、ATでの免疫不全の原因としては、抗体リセプターからのシグナル伝達系における異常ではなく、DNA組み換え機構における異常が重要であろうと考えられた。現在さらに、この過程におけるATMの機能を解析中である。
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