研究概要 |
本研究は、我々が発見したMHCクラスI関連遺伝子MR1の解析を進め、またMR1を含めたMHCファミリー全体の分子進化の理解を進展させることを目的とする。1)MHCクラスI関連遺伝子MR1の解析:(1)MR1遺伝子の遺伝子構造:ヒト及びマウスMR1遺伝子は、各々20、17kb以上の長さに渡ってexonが存在することが明らかになった。基本的な構造は、古典的MHCクラスI遺伝子と類似していることが判明した。MR1は、現在までに知られているMHCクラスI(関連)遺伝子の中で、最長の遺伝子構造を有している。(2)MR1蛋白とβ_2-microglobulinとの相互作用:MR1蛋白に対する特異的抗体を用いた免疫沈降反応実験により、MR1とβ2-microglobulinとの相互作用が明らかになった。2)MHCクラスI(関連)分子の分子進化:これまでに我々は、最も原始的な有顎脊椎動物である軟骨魚類から典型的なMHCクラスI遺伝子の単離に成功した(Immunity7,777-790,(1997))。この軟骨魚類MHCクラスI分子を基に、脊椎動物における古典的MHCクラスI分子の保存性について詳細な解析を行なった。軟骨魚類MHCクラスI分子のペプチド結合領域は、哺乳類に類似した環境を保持していることが推測された。また、T細胞レセプターとMHCクラスI分子の相互作用面における基本的特質は、脊椎動物の進化上早期に確立していたことが明らかとなった。また、MR1遺伝子がCD1と同様に染色体重複機構で現在のMHC領域から別れたとすると、MR1に保持されている古典的MHCクラスI分子との部分的共通性は、脊椎動物進化の初期に起こったと予想される重複以前に確立していたと推測された。
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