研究概要 |
心血管系疾患の病因候補遺伝子となる心筋に強く発現する新規遺伝子を単離する目的で、心筋と骨格筋との間でサブトラクションを行い、cDNAライブラリーを作製した。このライブラリーからランダムに選択した約1,000クローンをシークエンスし、データベースとの比較を行ったところ、約24%は未知の遺伝子由来と考えられた。そこで、そのうち約50種についてRT-PCR法で発現の組織特異性を検討し、心筋に特異的あるいは心筋に特に強く発現する7種について、全長cDNAを単離した。ついで、このうち心筋に特異的に発現する2種について、ゲノム遺伝子構造を決定した。1つは心筋特異的フォスファターゼM20サブユニット遺伝子であったが、ゲノム構造の決定の結果、筋特異的M130サブユニット遺伝子(MYPT2)と同一であることが判明した。すなわち、心筋特異的M20サブユニットはMYPT2遺伝子第13イントロン内の心筋特異的プロモーターからの転写産物と考えられた。さらに平滑筋型M20サブユニットもMYPT2遺伝子第18イントロン内からの転写産物であると思われるため、MYPT2遺伝子は異なるプロモーターを使用することで3種のフォスファターゼサブユニットをコードする遺伝子であると考えられた。一方、他の1つはネブレット遺伝子であったが、第19エクソン内に多型(Asn654Lys)が存在した。このLys型ホモ接合体の頻度は拡張型心筋症患者集団に有意に多いため、本症の遺伝的危険因子と考えられた。これとは別に心筋症患者集団においてタイチン遺伝子変異を検索したところ、病因と考えられる変異が認められた。また、肥大型心筋症や高安病で病因に関する遺伝的変化を同定した。
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