研究分担者 |
CIARAN Morri 京都大学, 医学研究科, 外国人特別研究員
岩井 裕子 京都大学, 医学研究科, 助手 (10281726)
園田 英一朗 京都大学, 医学研究科, 助手 (50281093)
高田 穣 京都大学, 医学研究科, 助手 (30281728)
|
研究概要 |
細胞のゲノムは、内因的および外因的な要因によって損傷が起る。内因的損傷としては、DNA複製時のエラー、DNA断裂、酸素ラジカルによる塩基の損傷などが起る。外因的損傷を与える原因としては、電離放射線照射、紫外線、環境変異原、抗がん剤などがある。以上のような損傷を修復する複数の経路を生物は、進化の過程で獲得した。この修復経路に異常が起ると、ゲノムの一次構造が不安定になり、発癌が促進される。我々は、高頻度に標的組み換えを起こすニワトリBリンパ細胞株DT40で様々な遺伝子の変異クローンを作成することによってDNA修復機構、特に相同DNA組み換え機構を解析した。 酵母で相同DNA組み換え機構に関与する遺伝子と一次構造が保存されたヒト相同遺伝子がこれまでに13種類(Rad51、Rad51B、Rad51C、Rad51D、Xrcc2、Xrcc3、Rad52、Rad54、Rad54B、Mrel1、Rad50、NBS、Dmc1)見つかっている。我々は、これらの変異クローンを標的組み換えを使ってDT40から作成している。これまでに半分以上の遺伝子の変異クローンを作成した。我々は、以下の3点を解明した。 (1) 相同DNA組み換えは、酵母と同様に電離放射線照射によって生じたゲノムDNAの2本鎖切断を修復する(Cell 89:185,1997)。このタイプの修復は、S期後期からG2期にかけてのみ起こる。すなわち、相同DNA組み換え機構は、放射線照射によって切断された染色分体をもう一方の染色分体と組み換えを起こすことによって切断を修復するのであろう (EMBOJ.17:5497,1998)。 (2) 標的組み換えは、Rad51、Rad51B、Rad54のいずれかがないと検出できないレベルにまで低下した。Rad52は、酵母の相同DNA組み換え機構のなかでは最も重要な分子である。ところが、Rad52欠損株では、放射線感受性は正常レベルであり、標的組み換えも数分の1に低下した程度であった(MCB.18:6430,1998)。(3)Rad51欠損によって染色体段裂が自然発生し細胞死が観察された。この知見は、動物細胞では、DNA複製中に少数のゲノムDNAの2本鎖切断が起こりその致死的損傷を相同DNA組み換えが修復することを示唆している(EMBOJ.17:598,1998)。
|