研究概要 |
ゲノムの配列情報と機能情報をいかに結びつけて,それをどうコンピュータ上に表現し,ゲノム解析に役立てるかを研究するため,枯草菌ゲノムを題材として,網羅的な配列解析と,その結果の知識ベース構築を行った.とくにゲノム中に多数存在するパラログ遺伝子に着目し,機能との関連を調べた.枯草菌ではABCトランスポーター遺伝子群が最も大きなパラログクラスターを形成している.これを判別し,機能的に再分類してアノテーションを行うため,配列類似性だけでなく,モチーフや膜貫通部位情報,ゲノム上での並びに基づくオペロン情報などを援用し,さらにパラログのサブクラスタリングとオルソログから得られるアノテーションを総合することで,初期のABCトランスポーター遺伝子候補79個から5クラス68個に絞ることができた.同様に様々な情報を総合して判断するやり方でPTS,MDRといった膜輸送系タンパク質の整理を行った.以上の整理の過程で用いた総合的な判別法を含めて枯草菌膜輸送系に関する知識ベースを構築した.即ち,個々のトランスポーターに関する事実情報だけでなく,その判別の際のルールをメソッドとして実装したオブジェクト指向の作りになっている.特に結果の可視的な表示能に配慮するためJava言語を用いてシステムは作られている.この際Java言語のオブジェクト指向の枠組を直接利用して知識ベースとして実装するという方法を試みた.特に判別のメソッドは,他種のゲノム配列をアノテートする際にも有効と考える.
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