ヘルパーT(Th)細胞は、サイトカインの産生様式および担う免疫反応により、2種類のサブセットに分けられる。Th1はIL-2、IFN-γなどのよる細胞性免疫、Th2はIL-4、IL-10などによる液性免疫を担っている。ヒトにおける研究は、サイトカイン血中濃度が現在の測定系では検出感度以下となるために十分には進んでいない。本研究では、まず、Protein Kinase C activatorであるPMAとIonomycinでリンパ球を刺激することにより、ELISAで測定可能なレベルのサイトカインを血漿中に分泌させることも可能であるかどうかを検討した。方法は末梢血をヘパリンの入った容器に採取し、PMAとIonomycinを加え、4時間〜96時間培養し、血漿中に分泌されたサイトカインをELISAで測定した。刺激する前の血漿中サイトカイン濃度は全てELISAの測定感度以下であった。刺激後12時間後より上清(血漿)中のサイトカインは検出可能となり、24時間後にピーク値を示した。以上よりヘパリン採血した末梢血をそのままPMAとIonomcinと共に培養することにより、血漿中のサイトカイン濃度がELISAで測定可能になることが明らかとなった。さらにこの方法を用いた具体的な応用例として、妊娠・出産によるサイトカイン産生能の変動を調べた。リンパ球によるサイトカイン産生能はIL-2、IFN-γ、IL-4、IL-10全て出産後1-6か月の時期に著明に亢進していることが明らかになった。このことはなぜ自己免疫疾患が妊娠中軽快し、出産後に発症・増悪するのかという疑問に答える結果であった。以上の研究により、プロテインキナーゼを活性化することによりリンパ球のサイトカイン産生能を測定できることが明らかになった。本測定法は自己免疫性疾患、アレルギー疾患の病態解明などの検討にも有用であると考えられる。
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