研究概要 |
本年度は、(1)金属錯生成を通して二本鎖構造を形成する人工DNAのビルディングブロックとなる3種のキレート型人エヌクレオシドの合成、(2)機能性金属錯体を周囲に配列した大環状ペプチド金属錯体の合成を行った。前者については、金属錯生成を通して二本鎖構造を形成する人工DNAの創製を目的として、金属イオンと錯体を形成するo-phenylenediamine,o-aminophenol,catecholを導入した3種の人工β-C-ヌクレオシドを合成した。この人工ヌクレオシドは水素結合の代わりに金属錯形成により塩基対を形成することができる。例えば、フェニレンジアミン型ヌクレオシドと硝酸パラジウムとの錯形成をNMRおよびESIマススペクトルで調べた結果、ヌクレオシドとパラジウムが中性水中で安定な2:1錯体を形成することがわかった。現在、これらを用いたオリゴヌクレオチドを合成すべく、アミダイト法を使う自動合成、およびトリエステル法を使うバッチ合成を行っている。後者については、ペプチドを基盤とする分子認識素子を創製することを目的として、グリシンと、金属キレート能を有するチオール残基をもつシステインの繰り返し配列を持った、大環状ペプチド金属錯体(cyclo[L-Cys(terpyPt)Gly]_3およびcyclo[L-Cys(terpyPt)Gly]_4)の合成法を確立し、それらのアニオン捕捉能を種々の分光学的手法により明らかにした。これらは、アニオン性高分子であるDNAと相互作用をもつことが円二色性スペクトルやNMRの測定で明らかになった。現在、大環状ペプチド金属錯体の結晶構造やDNAとの相互作用について検討している。
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