ササゲは食用マメ科中、乾燥下で最も高い光合成能を有し、半乾燥地帯で栽培されている重要な穀物である。ササゲは初生葉と第一本葉節間の茎が発達し貯水組織として機能しているといわれているものの、まだ本組織の機能は不明である。本研究ではまず、耐乾性の高いササゲに4日間のかん水処理を行ったところ、インゲンと比較して光合成能は約2倍高い値を示した。また、ササゲの初葉節と第一本葉節間の茎は他の茎より柔組織が発達し多量の水分を保持していることが分かった。 次に中性子線を用いた植物中の水分のイメージングを行った。X線フィルム法ならびにCT法による水イメージング系の組み立てを試み、特に、CT法では、コンバータの開発、ターゲット系および冷却型CCDカメラの撮影系を工夫した。植物試料台の回転ならびにカメラのシャッターの開閉時間の制御系のコンピュータソフトも開発した。現在、画像解析のためのソフトを検討中である。実験結果としてはX線フィルム法により乾燥処理を施したササゲの着目茎から選択的に水分が減少することが示されたことをJ.Plant Phys.に投稿した。 ササゲによるリアルタイムでの水の動きを知るため、PET(Positron Emission Tomography)も行った。まず、サイクロトロン加速器を用いて水をヘリウムビームで照射し、ポジトロン放出核種(^<18>F)で標識した水を調製したところ、トレーサー実験可能な量のアイソトープが得られることが分かった。次に標識水をササゲに短時間吸収させ、本茎ならびに本葉の水分吸収動態を調べることを試みた。まだ、予備実験の段階ではあるが、トレーサー実験可能な標識水の調製ならびに、植物への吸収動態のリアルタイム解析が可能となった。乾燥処理を施したササゲはインゲンと比較して水分吸収活性が高く維持されることが示された(J.Plant Nutr.投稿中)。
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