本研究は、シロイヌナズナgun突然変異体(gun1-gun5)を、遺伝学的・分子生物学的に解析することによって、葉緑体と核にコードされる光合成関連遺伝子の協調的発現調節に関わる、葉緑体から核への情報伝達経路を解明することを目的としている。本年度は以下の課題について研究を進めた。 1) GUN5遺伝子のクローニング GUN5遺伝子の候補であるCHLH遺伝子を、gun5突然変異体に形質転換し、突然変異が相補されることを示した。また、CHLH遺伝子の塩基配列を野生型とgun5突然変異体で比較したところ、塩基置換によるアミノ酸配列の変異が生じていることが分かった。 2) gun5突然変異体におけるMg-chelatase活性の検討 GUN5がMg-chelataseのHサブユニット遺伝子をコードすることが分かったため、gun5およびそのアリルとして同定されたcch変異体、ならびにMg-chelataseのIサブユニット突然変異体であるcsにおいて、Mg-chelatase活性を間接的に測定した。その結果、いずれにおいても活性の低下が見られ、特にcchおよびcsにおいて著しい活性の低下が観察された。 3) 新たなgun突然変異体アリルの単離 gun突然変異体の多くは、単一のアリル(対立遺伝子座)しか同定されていないため、それらのgun突然変異に対応するアリルの突然変異体を検索するとともに、新規なgun突然変異体の単離も試みる。本年度は、新たなCAB3プロモーター・リポーター(GFPなどを用いる)系の構築を進めた。 本年度途中で所属大学の変更があり、実際に研究出来る時間及び設備に制限があったため、当初の目標を完全には達成できなかったが、1)で設定したGUN5のクローニング完了は研究上の大きな前進である。
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